連休中、もう一つ出来事があった。
「コミケ行ったんだけどさぁ」
マヤは五月の東京でのコミックマーケットにここ三年ばかり参戦しているのだが、
「帰りの羽田空港でセラミックスに会ってさぁ」
瀬良翠のことをマヤだけは、なぜかセラミックスと呼ぶ。
「それがコミケの袋なんか何個もぶら下げてたから、ちょっと機内で、小一時間ばかり問い詰めてやった訳ね」
別にヲタクって隠すような事柄でもないのに、とマヤは腹が立ったらしかった。
すると、
「あの子ホントは超ヲタで、日頃あんなにボロクソにアイドル部ディスりまくってるくせに、初音ミクのグッズ転売屋なみに買っててさ。好きなら好きって素直になればいいのに違うから、こっちが馬鹿にされてるみたいで、だんだんムカついてきてさ」
詰問させてもらった、というのである。
「証拠の写真もあるよ」
そこには引きつって泣きそうな笑顔をした翠が、初音ミクのぬいぐるみを抱えている姿がある。
「なんでミクヲタなのを隠す必要があるのか、私には皆目分からないけど、まぁ新千歳まで充分な暇つぶしになったからいいわ」
マヤは翠に対し、ヲタクは恥ずべきものではないとかなり腹に据えかねていたものか、清々しい顔をしていた。