あやめははじめこそ雪穂の顔を見て安堵したのか、泣きじゃくっていたが、
「…なんでここが分かったの?」
「あのね、実は」
ノートの件を話した。
「別に見たかった訳じゃなくて、落ちたのを片付けてあげてたら見えてしまって。タダごとじゃないのだけは、すぐ分かった」
それで藤子に相談したらしい。
「藤子ちゃんに相談したら、それはいじめだからちゃんと様子見てあげてって」
「えっ…?」
あやめは顔を上げた。
「私たちはあやめちゃんを、一人になんかしないよ」
と雪穂は言った。
「だって、仲間じゃん」
いじめられたら部室に逃げればいい、と雪穂は言い、合鍵を渡した。
「先生や澪先輩だって、仲間は信じるものだって言ってたし」
一年で雪穂は、精神的に成長していたらしかった。
「先生には私から話すから、あやめちゃんは何も心配しないでいいよ」
ようやくあやめは涙が止まった。
しばらく雪穂は、あやめの隣に座って陽の傾きを浴びていた。