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朔間先生へ
先生。ずっと、ありがとう。
命を大切にするって、どういう意味なのかを、今も考えています。
これの後に書く手紙を先生に預けるときに答えが出ていたら、少し話をしたいけど、難しいかな。
昨日からずっと手紙を書いているんだけど、手は痛いし、頭も痛くて、そろそろ限界かもしれない。
なんか、色々思い出してたら泣けてくるし。
悲しくないのに出る涙は、その涙自体が悲しくて、なんか、余計に泣けてくるみたいだ。
先生はこんな経験、した?
したことがないなら、できれば経験せずにいてほしいな。
なあ、先生。
俺、もう怖くないよ。
不安も何も無い。
前に先生には話したことのある友だちのおかげ。
それと、冬華のおかげだ。
この世界に生まれた意味なんてなくていい。
友だちに、冬華に出会えて良かった。
愛おしいんだ。どうしようもなく。
抱きしめたくてたまらない。
さんざん迷ったけど、冬華への手紙に、俺の気持ちを書こうと思う。
もうめちゃくちゃ手が痛いのに、伝えたくて。
心の中を裏返してスタンプしてやりたいくらいだ。
自ら命を断つやつの言葉なんて、世界中のほとんどが聞いてくれないと思う。
死ぬ間際に希望を知って、それでも生きることをやめようとする俺の言葉なんて、信じてもらえないと思う。
先生も、信じなくていい。
でも、聞いてくれるか。
今日に触れたいって思うんだよ。
自分の明日はもういらないって思うのに、大切な人の明日に手を伸ばして引っ張って、今日になったのなら、この手で触れたいんだ。
みんなの今日がずっと続くように。
明日が来ないまま途切れてしまわないように、今日と明日の間に立って、0時を跨ぐ間際に、引っ張ってやりたい。
それって、生きてる俺にはできないことだよな。
みんなと一緒に今日に触れることはできないけど、毎日、一瞬なら、触れることができる。
俺は、それが、すごく幸せなことだと思うんだ。
命の使い方を生きているうちに見つけられてよかった。
生きて使えないのが難点だけど、でも、ちゃんと見つけた。
もう迷わずにいられそうだ。
ありがとう、先生。
先生の今日も、ちゃんと連れてくるからな。
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