そういえば、アキラは出会ったときには夏哉はバスケをしていなかったと言っていたけれど、いつのことなのだろうか。

インターハイの地区予選をわたしは見に行かなかったけれど、地区予選で敗退したという話は聞いていた。

梅雨に入ったばかりの、夕方から雨が降ったある日、制服姿の夏哉が帰宅部と同じ時間に傘もささず濡れて帰るところを見かけたことがある。

あの頃にはもう、引退していたのだろうか。

アカツキくんは冬まで残る、ということを夏哉に聞いていたけれど、インターハイと同じような結果を残し、秋の真ん中に引退してしまったらしい。


今度、もう、会うことはないかもしれないけれど。

もし、アカツキくんに会えたら、夏哉のことを聞いてみよう。

学校内でいちばん仲が良かったのはアカツキくんだろうから。


ぼんやりと考え事をしていると、さっきは素通りをした診療所の前にたどり着く。

決して大きくない正面のドアは横にスライドするタイプで、ナオキが何の躊躇もなく取手を引っ張ると、レールとドアの擦れる音が響き渡る。

砂利を噛んでいるのか、ギギギ、と嫌な音を立てるから、つい顔を顰める。


音からして硬い上に重そうなドアを片手で開いたナオキが先に中に入ろうとして、パッとこちらを振り向く。


「え、なに?」

「そういえば、名前似てるんだな、夏哉と」


似てる? どこが、なにが。

似ているどころか、真反対なのに。


同じなのは、名字が一文字なこと。

冬と夏、共通点ではあるけれど、似てはいない。