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橘 冬華さんへ
冬華がこの手紙を読んでいるとき、 僕はもうこの世にいないでしょう。
堅苦しい書き方は慣れないな。
仕切り直し。
冬華、これ、いつ読んでる?
まさか何年も経ってから開いてるなんて言わないよな。
もしかして、冬華以外の誰かが何百年後に発掘したとか。
これ、恋文じゃないんで。ノーラブレター。
でも、やっぱり恥ずかしいから、もしも未来で発掘されていたのなら、これ以下は読まずに仕舞ってください。
なんて、これは冗談。
そうだな、一月の終わり頃か。
この時期に読んでいると信じるからな。
そうだ、冬華。
ひとりで泣いていないか?
いや、冬華の場合は泣けない方が心配なんだけど。
天国。あ、自殺すると天国には行けないんだっけ。
まあ、いいや。
とにかく、どこにいても冬華のことはちゃんと見てる。
俺のことは心配しなくていいよ。
冬華の、自分のことだけでいい。
なあ、冬華。
俺が死のうとした理由、知りたい?
死のうとしたというか、死んだ理由。
ひとつしかない命をゼロにしようとした理由。
知りたくないって言われたら、少し困るな。
押し付けるような真似をしてごめん。
身勝手なのは承知で、頼みたいことがある。
もしかしたら、冬華が知りたくないことまで知るかもしれない。
俺が知られたくないことまで、知られてしまうかもしれない。
それでも、託せるのは冬華しかいないんだ。
俺には、六人の友だちがいる。六人しかいない友だち。
もうしばらく誰にも会っていないから、皆心配してると思うんだ。
だから、冬華。
皆に会いに行ってほしい。
それで、一緒に書いた手紙を渡してくれないか。
まずは一人目。
名前はコウト。
あとは、会ってからのお楽しみ。
頼むよ。
よろしくな。
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