改札をくぐると同時に、ちょうど電車が止まった。
四両編成の電車はロングシートで、ボックス席でないことにホッとしながらも、どう座ろうか迷う。
県南方面への電車は、市街地から離れていくにつれて乗客が少なくなっていくこともあって、三人が並んで座れそうな場所はいくつもある。
わざわざ離れて座ることでユリの機嫌を損ねてしまわないように、アキラを真ん中にして並んで腰掛ける。
数分と留まらずに電車が発車したあと、思いのほか長くされるがままでいたアキラが口を開いた。
「なんだよ、この並びは」
ユリが真ん中はないとして、アキラはきっとわたしとユリが隣合う形を想像していたのだろうけれど、わたしは遠慮なくアキラを真ん中に押しやった。
わたしに耳打ちするでもなく、ユリにも聞こえるように言ったせいで、私よりも先にユリが反応を示す。
「冬華が隣に来るならあたしあっちに行くから」
「そんなの、わたしだって嫌だよ」
露骨な態度に腹が立って、大人気ないとわかりながら言い返す。
どちらの方が嫌いかなんて、不毛すぎる争いだとわかっているのに。
答えなかったら、言い返さなかったら、負けてしまうような気がして。
「俺を挟んで喧嘩すんな」
間に挟まれて居心地悪そうにしながらも、寝る体勢に入っていたアキラが呆れ混じりに言う。
「どっちが年上かわかんねえだろ」
「実際、そんなに変わらないし」
余計な二の句にユリが乗っかる。
「一個違いだからか?」
わたしに関わることでもあるというのに、ユリは勝手にべらべらと話し始めた。
「冬華は2月生まれで、あたしは4月生まれだから」
「あー……なるほどな。そんな変わんねえな」
早生まれの有利だとか不利だとか、気にしたってどうしようもないことだと思っているし、それで困ったことなんてない。
ユリの言うことにだって、だからなんだよ、というのが本音だ。