アキラが来た方の遮断機が下りる音が聞こえる。

急いて切符を買うユリの後ろで、電光掲示板をチェックすると、わたし達の乗る電車の終着駅は路線図に載るギリギリの駅だった。

まさかそこまで行かないだろうと、財布ではなくパスケースを取り出すと、ユリが目敏く気付いた。


「エリア外だから切符買って。早く」

「エリア外……」


路線図を見ると、県南方面への三駅以降はICカードがエリア外で使用できないと書いていた。

そうしているうちに、販売機から急かすような音が鳴る。

ユリが切符を選んでくれていたらしい。


「たっ……」


高い、と口に出しかけて、慌てて噤む。

1680円。片道で。

まさかと思っていた至駅と略されたひとつ前の駅だと確認して、念のために持ってきていた万札を入れる。

先に買ってしまったユリの分はどうしようも出来ないけれど、せめてアキラの分は、と2人分まとめて買おうとすると、横から伸びてきた腕が1人分の運賃に切り替えて清算ボタンを押してしまった。


「勝手なことしてんなよ」

「でも、付き合わせてるのはわたしだから」

「気になるんなら別のもんで返せ」


べろりと吐き出されたお札を受け取らずにいると、ピーピーと電子音が鳴る。

切符とお札、小銭を取って販売機の前を退くと、アキラが入れ替わりで切符を買った。


往復で三千円を超える出費。

それに、この距離だと一時間以上かかる。


アキラにとっては金銭のやり取りなんて気分のいいものじゃないのだろうけれど、今日のお礼を切符代として精算できれば手っ取り早かったのに。

別のもので、と言われても、思い当たるものがない。