─────────────────────


アキラへ


お前、こういうの苦手そうだな。

せいぜい頑張って読めよ。


この手紙が俺の想定している時期に届いていることを願って、もしそうじゃなかったら、めちゃくちゃ恥ずかしいことを前提に書くからな。

まあこれは、届けたやつに託すしかないことか。


アキラと俺は結構似てるよな。

そんなわけねえだろって言うかもしれないけど、似てるんだよ。


バスケが好きで、嫌いなところ。


辞めたいなら辞めればいいって、アキラの周りの奴らは言うのかもしれない。

だからってわけじゃないけど、俺はアキラに辞めるなって言いたい。


これなら、どっちを選んでも、人のせいにできる。


俺はアキラの謎理論、好きだ。

『バスケが俺を呼んでる』って。

俺もたまに、そういう錯覚をする。


俺に青春と呼べる時間があったのだとすれば、それは間違いなく、バスケをしていた時間だ。


でも、本当に好きだったはずのものを好きだと言えなくなることってさ、あるんだよ。


戻れるかもしれない、けど、戻れないかもしれない。


周りの言葉なんて全部無視していいんだ。

アキラの苦しみは、アキラしか知らない。


でも、苦しみが人それぞれにあって、今アキラの抱えているそれが、アキラにとっていちばん苦しいことだとわかってくれるやつの言葉は、胸の片隅に留めておけよ。

その言葉はきっと、何年か後の未来で、今のアキラを救ってくれる。


逃げてもいい。隠れてもいい。捨ててもいい。

いつか、きっと救われる。救えるから。


大切だったはずのものが本当に大切だったのか、今はわからなくてもいい。


悩んでもいいから、迷うな。


あとは、アキラ次第。


誰の足跡もない道を行くアキラの足元を少しでも照らしてやれるように、この手紙を残すよ。



同封したメモを冬華に渡して。


それと、これは俺のワガママ。

冬華との繋がり、ここで断たないでほしい。


冬華はバスケが好きなんだ。

結構は目は肥えているから、頼りになるよ。


じゃあな、アキラ。


─────────────────────