見た目をどうこうと言える立場ではなくても、部活に入っているのにその容姿でいいのかだけはききたかったけれど、まずは本来の目的に戻ることにする。
「ハドロは返すよ。人を探してるんだけど、教えてくれる?」
「いいよー。誰探してんの?」
興味を持ったのか、三段の階段をひょいと軽やかにおりて、わたしの正面に回る。
ハドロサウルスの蓋を差し出すと、からだに比例した大きな手で受け止められた。
「名前だけしかわからない。アキラっていう人」
「アキラならバスケ部とバレー部に両方いるよ。どっちかはわかんねえ?」
「……バスケ部かな」
「おねーさん、適当に言ってね?」
見抜かれたことに対する動揺を顔に出してしまったせいか、ケラケラと笑われる。
「まあ、ちがったらちがったで逆なだけだしな。とりあえず、バスケ部の方なら呼んでやれるよ」
「じゃあ、そっちのアキラで」
「オッケー。ちょっと待ってて」
そう言い残して、彼が走っていったのは体育館の中ではなく、真逆の校舎。
どうしてそっちなのかと止める隙もなかった。
バスケ部だと言っていたのに、ここにいないのはどういうことなんだろう。
なにか用事があって部活に来られないのなら、わざわざ呼び出すのは申し訳ないと今更思ったところで、勝手に校舎に入って追いかけることはできない。
立ったり座ったりと落ち着きなく金髪くんが戻ってくるのを待っていると、小柄な男の子の腕をつかんで連れてきた。
金髪くんとはちがってこちらは地毛なのだろうけれど、陽に透けて明るい茶色に見える髪で背の低い男の子。
制服を着ていてマフラーに顎を埋める姿は、これから部活に参加するようには思えない。
「おねーさん、こいつがアキラ。合ってる?」
そう言われても、わたしが探しているアキラかどうかは見た目では判断がつかない。
アキラと呼ばれた男の子は、つり目をさらに鋭くさせて、わたしを一瞥した。
目の前に立ち止まると、わたしの肩越しに体育館の中を覗いて瞬きもしない。その目に、部活に参加したいという意思は見えない。
「話、聞いてやれよ」
「うるせ……」
金髪くんに顔を寄せられ、不機嫌そうに呟いて、つかまれていた腕を振り払う。
そんな態度に慣れているのか、熟れた様子で背中を叩くと、金髪の彼の方は体育館の中へ入っていった。