「これが、昨年末の最後に会った榊くんが言っていたことです」


ずいぶんと長く、朔間先生は話し続けた。

最初は等間隔で入れていた相槌も、途中から途切れてしまっていた。


「でも、夏哉が授業中にいなかったことなんてないですよ」

「体育、情報、選択授業。心当たりは?」

「あ……」


心当たりも何も、それらはすべて、夏哉とは別に受ける授業だ。

教室と、家の近くで顔を合わせてはいたけれど、以前のように見かけると駆け寄ってくることもなく、目が合うと軽く手を振られるだけであったことも思い出す。


「先生、どうして、止めなかったの」


違うでしょう。誰を責めることでもないでしょう。


「みんなのこと、知ってたなら! 手紙を託されたのなら、どういう意味なのかわかってたんでしょう?」


口から勝手に出ていく言葉たちを、止められない。

だって、最後に会ったわたしは何も気付くことすらできなかった。

止められたのは、朔間先生だけだったのに。


「僕は、榊くんの友だちにはなれませんでした」


取り乱したわたしの腕が朔間先生の肩に当たった。

けれど、そんなことは気にしていないようで、朔間先生は一度閉じた便箋を開く。