コウトくん
アキラくん
ユリさん
ナオキくん
ヒサコさん
僕以外の5人の話をたくさん聞いた。
その断片に、榊くんの心の真ん中にあるものを見つけられる気がして。
日毎に榊くんの調子の高低差、落差が増していく。
元気に笑っている姿さえ、痛々しく見えるほど。
僕以外の友だちが随分と榊くんの支えになっているようだった。
そして、榊くんにとって誰よりも大切な人。
この学校にいる、僕の知らない『 タチバナ トウカ 』という女子生徒。
どれだけ話を聞いても、僕自身の言葉で向き合おうとしても届かない部分に、彼女なら触れられるのではないかと、何度も探しに行こうとした。
助けてやってほしい、と。
僕にできないことだから、頼みたかったわけじゃない。
放っておいても、このままの状態でいても、夏哉くんがどこかへ行ってしまいそうで、僕の手と、それから他のトモダチ5人の手と、彼女の手で、暗い方へと歩いていく夏哉くんを止めたかった。
僕は、それをしなかったんだ。
夏哉くんと彼女の関係は、幼馴染み以上の名前がつくものではないけれど、決して点と点だけで結ばれたものではないと知ってしまったから。
「昔、冬華が言ってたんだ。夏哉と冬華って真反対だねって。俺、それがショックだったんだけど、あいつすっげえ笑顔でさ、そばにいたら暑くもないし寒くもなくて、いちばんいいねって。幼稚園児の戯言かもしれないけど、馬鹿みたいだけど、俺はその言葉にずっと救われてる。たった一言が、今の俺のそばにある。冬華が今、俺の隣にいなくても、あの言葉は消えない」
雪の降る寒い日。
榊くんはいつものようにマフラーに口元を埋めて、瞼を下ろして、戒めのように誓いのように言った。