図書室というか、そこは図書館だった。
図書室がある校舎の一角は円形状に広がっていて、その敷地の大半を高い本棚と敷き詰められた本が占領している。図書室なのにその屋内の中央に階段があって2階に続いている……。要所要所には本を読むためのテーブルや椅子が備えられてあって、入口の近くにはカフェのような簡易の給湯室まである。
図書室の豊富な本と装飾に見惚れてしまっていたら、猫探しのことを忘れてしまうところだった。
けど、白猫の姿はどこにも見当たらない。
「おーい、白猫やーい! いるなら出てこーい!」
シーン………。
まあ、猫だもんね。人間じゃあるまいし、都合よく返事なんてしてくれないよね。とほほ……。
すっかり気落ちして、もう帰ろうかとも思ったけど、自分が迷子の身であることを思い出して、結局帰れないことにまた気落ちする。
静まり返った図書室はなんだか不気味な感じがして、一歩一歩でも奥に進んでいく度に胸の内に抱える塊のような不安がだんだんと膨らんでいく。
…………まさか、出るわけないよね?
歩く度に、自分の足音が室内に重く響く。
足音も次第にまばらになってくる……。
コツン、コツン、コツン…………。
お、おかしい。足を止めたのに今も足音は続いている。背筋がブワッと悪寒に襲われた。
う、嘘っ……まさか、本当にアレが出たの……?
哀れにも壊れたブリキ人形のような動作で、恐る恐る後ろを振り返る。
でも、背後にある高い本棚の影で近づいてくるそれが何なのかは依然はっきりとはわからない。代わりにゆっくりと近づいて来る未知の足音が、私の恐怖心をじわじわと仰ぐ。
ついに堪え切れなくなった私が悲鳴を上げようとした、その時だった。