「惚けるな。俺にも紹介しろよ、お前の隣にいる彼女。もしかして前に話してた理事長のお孫さんか?」
思い出したというように、高雅さんに確認する。
「知ってるなら、僕から話す必要はないね」
「……もうお前に聞くのはやめた」
終いには呆れられて、大仰な溜息が返ってくる。
顧問まで疲れさせるなんて、とんだ問題児なんだろう。桐嶋高雅。
「悪いな、こんな捻くれた奴で。そんで確か、お前が理事長のお孫さんの……」
「藤澤桃香です。えっと、おじいちゃんがお世話になってます」
「桃香か、よろしくな。俺は英語科目担当で、一応ここの顧問にも就いてる白馬蜜弥だ。俺の方こそ、理事長には世話になってるぜ」
白馬先生はそう言って、軽いタッチでくしゃりと私の頭を撫でた。
イケメン英語教師に頭を撫でてもらうなんて、夢に見た少女漫画のワンシーンだ。なんて贅沢。
するとそれを黙って見ていた高雅さんが、おもむろに口を開く。
「ちなみにロリコン、タラシ、金髪不良と三拍子揃ってるから、無闇に近づかない方が身のためだよ」
「オイッ! てめっ高雅、誤解されるような言い方はやめろ!」
再び高雅さんに突っかかる白馬先生は、何というか気さくで、私が知っているお堅い先生とは違う雰囲気だ。年も近そうだし。あとは教師なのにふわふわの金髪が少し気になる。
「あぁ、そうだね。マザコンの間違いだったよ」
「なっ、マザコンって、この髪はいくら染めてもまたすぐ戻るから仕方なくてだなっ……」
「ふうん、そう。よくその髪眺めて、母親のこと恋しがっているみたいだけど」
「べっ、別に恋しがってねえって!」
すっかり蚊帳の外にされてしまって、話についていけない。
白馬先生に「いやっ、これは違うんだ、桃香。断じて俺はマザコンじゃねえからな!?」ってすごく必死に言い訳されたけど、何のことかよくわかっていないから大丈夫。