そんな私が無事に図書室にたどり着けたのは、まさに奇跡だと思う。
 あれから少し時間はかかってしまったけれど、ここで二の足を踏んでもいられないので図書室の扉を叩く。

 ここ最近は四月だというのに生憎の天気が続く。こんなんじゃ校庭の桜も台無しだ。
 灯りもない図書室の中は薄暗い。この胸の不安をまるで反映しているかのようだ。

 それに……暗い図書室って、雰囲気がやっぱり不気味だ。シンプルに言ったら出そうだ。
 とても弱い腰で、彼の名を呼んでみる。「図書室でうるさくするな」って彼らしい反応を胸の奥で期待するけど、その声はすぐに暗闇の中に溶けて消えてしまった。
 冷たい空気が流れる中で、何も反応がない。この暗闇にみんな食べられてしまったかもしれないなんて、冗談くらい言ってないと怖くて前に進めない。

「ミャア」

「ひいいいいいっ」

 どこからか現れた白猫に、思わず腰を抜かしてしまった。これには白猫ちゃんもびっくりだ。
 まだ少し目を丸めている白猫によしよしと頭を撫でて謝罪する。

 でも、白猫がいるなら高雅さんもこの近くにいるかもしれない。淡い期待に胸を焦がす。


 賢い猫ちゃんに道を案内され、図書室の沈黙に怯えながら小さな背中を追いかける。
 白猫の足に迷いはない。やっぱり彼の居場所を知っているようだ。



「えっ――……」


 その瞬間、雷が遠くで光ったのかとこの目を疑った。

 けれど、その光は雷ではなかった。


 私の気配に気づいた高雅さんが、珍しく感情を顔に出している。動揺しているように見えた。

 その秘密を知ってしまったとき、あなたになんて声をかければよかったのか、バカな頭で何度も答えを探した。