雨が降り続けると、あの日のあなたに向けられた冷たい眼つきを思い出して、涙を堪える。
またあの日のように、あなたをうんざりさせるかもしれない。あなたは一人を望んでいるかもしれない。
入学式の日に、偶然あの図書室に迷い込んだことをまだ覚えているのかな。
なんて表現すればいいかわからないけれど、あの日あなたに出会えたことが私の運命を変えたと思うの。
あなたの記憶に、私はもういないかもしれない。
それなら、王子様を待ち続けるお姫様なんかに私はならない。
私の目の前には、固く閉ざされた図書室の扉があった。
王子様が来ないなら、私から迎えに行ってやる。
ようやくここまで足を運んだが、なかなか扉に手を伸ばすことができない。
ここに来るまではむしろかかって来いの姿勢で構えていたのに、いざとなると心臓が今にも破裂しそうで、勇気というものがこれっぽっちも湧かない。やっぱり無理だよぉ。
「あれ見ろよ。俺らの他にサボりがいたぜ」
「珍しいじゃん。しかも女子だ」
図書室の前で結局右往左往していたら、不良生徒に絡まれてしまった。めんどくさいな。こんなエリートボンボン学校にも不良っているのか。
ネクタイもろくに締めず、印象の悪い男子二人組は、図書室の前まで近づいてきてジロジロと値踏みするように見てくる。すごく気持ちが悪い。
「結構可愛いんじゃね?」
「俺、タイプかも」
あっ、なんかいい感じに評価されてしまったらしい。これは面倒だな。そう思ってここは一旦退くべきかと思案に耽ける。
「なあ、お前名前は? 何年?」
いきなり図々しく絡まれた。
「新入生じゃないの? ねぇ、それより彼氏とかいる?」
もう一人の眼鏡にも、気持ち悪い質問をされた。私が今話したいのはこんな人達じゃない。
ああ、どうして見てもらい人に見てもらえないんだろう。