……いや、別に言われたからじゃないけど、この間のこともあり私はまたお手製のお茶菓子を持って彼が待つ図書室に通うようになった。
 あれから少しずつ名前で呼んでもらう機会も増えたけれど、桐嶋高雅の仕掛けた罠にまんまとハマってしまった気がして、素直に喜べない自分がいる。あの桐嶋高雅に一瞬でも乙女心が揺さぶられてしまうなんて……。


 そんなこんなでだいぶ仲も深まって、お互いの関係が着実に築き合えてきた頃、それはまた嵐のように唐突にやって来た。
 
「どうも、久しぶりに参りました! 藤澤殿!」

「…………」

 それは初めて聞くものじゃない野太さの三重奏に、嫌な予感が脳裏を襲いかかる。
 そこには見事な上腕二頭筋を曝け出したボランティア委員会の御三方が、私の進路を塞ぐように立ち憚る。今すぐこの場から逃げ出したい。しかし、それはどうやら叶わない。

「我らボランティア委員会! 理事長殿の指示の下、再び藤澤殿を捕獲しに参りましたあー!」

 ほらね。やっぱりそれか。
 私の抵抗も虚しくその屈強な男の腕にずるずると引き摺られていく。
 こんなことなら、まだ桐嶋高雅の罠にどっぷりハマっていた方がマシだった。