配置についたところで、桐嶋高雅は私に手順を一通り説明してくれた。
 
「僕が棚の書物を調べるから、僕が言った事柄をその伝票にそのまま書き記すこと。問題はないね?」

「はい! 肝に銘じます!」

「いや、行動に移してくれないと意味ないんだけど……」

 まぁいいよ、そう肩を落として、一冊目の本に手を伸ばす桐嶋高雅のひとつひとつの動きを、一瞬も遅れぬように目で追いかける。
 しばらく沈黙が続く。パタンと本が閉じられ、もとの配置に戻される。続いて二冊目の本、三冊目の本、四冊目の本と、そこそこの時間をかけて一冊一冊を丁寧に調べ上げていく。

 私はただそれを眺めるだけの役割……。

「あのー、先輩その本さっきから見てますけど、何か問題でも?」

「ああ、今いいところだからちょっと黙って」

「…………」

 おいっ、なんだそれ。本の状態じゃなくて、内容かよ! 趣旨が違うよ! なかなか終わらないのは、そういうことだったんですか!?

 読書に没頭する彼の手から、すかさず本を奪う。
 睨んできた相手に、こちらも白い目を返して本を仕舞う。

「先輩、まずは仕事ですよ」

「…………」

 無言で作業に戻ったけれど、その目はどこか残念そうにしていた。あとでゆっくり読んだらいいじゃないですか。
 これは私が手伝いに来て正解だったかもしれない。猫ちゃんもそれをわかってて私を連れてきたのかも。