「今の……見たの?」
私より背の高い本棚が背後に迫る。
それをガタンと大きく揺らした私に、彼の瞳がじっとこちらの様子を覗いている。床をずるりと引き摺る鉈の刀身は、彼が握る柄の何倍もある。鈍い光を反射するそれに映るのは、恐怖と狼狽に脅える私の姿だった。
黒猫と白猫がそれぞれお供するように、その人の肩と足元に居座っている。膝から崩れ落ちた少女の姿を、その大きな瞳に捉えて嘲笑する。
憎らしくも、綺麗な顔が追い詰める。
少し照れながらもついさっきこの目で見た光景を思い起こし、私は疑わずにはいられなかった。
偶然見てしまった彼の……桐嶋高雅の秘密を。