茶菓子を食べて抹茶を飲む。教えられることもあるが、活動内容はもはやお茶会だ。

 兄は並ぶ部員の前に座り、右手で茶杓を取った。左手で棗――抹茶の一種である薄茶を入れる容器の一種――を取り、茶杓を小指と薬指で握ると、残りの指で棗の蓋を取り、それを右膝の前に置いた。茶杓を持ち直して、棗から抹茶を二杯茶碗へ入れ、杓についた茶を、椀の縁に軽く当てて落とす。茶杓を握って棗の蓋を閉め、それを元の場所へ戻し、茶杓を蓋の上に置く。

「お菓子をどうぞ」と兄が言うと、客として並んでいる部員の一人が、「お菓子を頂戴します」と一礼し、次いで「お先に」と、隣以降の部員へお辞儀して、茶菓子を食べ始める。兄は茶釜の湯を柄杓で茶碗へ入れ、椀の中に茶筅を立てるように入れ、前後に振って細かく泡が立ったのを目安に「の」の字を書いて、椀の中心で泡が立ち上がるように茶筅を抜き、元の場所へ戻す。

茶碗を出すと、先ほど声を出した部員が隣の部員との間に茶碗を置き、部員へ「お先に」挨拶して、兄へは「お点前頂戴します」と挨拶する。部員は茶碗を左手に載せ、右手を添えて、その手で、茶碗を手前に二度回して飲む。人差し指と親指で飲み口を拭い、椀の向きを直して畳の縁外へ椀を置き、両手をついた後、兄が置いた場所へ茶碗を戻した。

 茶室では、動作、茶道具、掛け軸や花に至るまで、空間と時間のすべてが芸術だと先生は語った。それがあったからか、兄は初めてこのように茶を点てるときにも一切緊張しなかった。兄自身が芸術という言葉に対して自由という概念を持っていた他、そう語った先生自身が、普段はよく話してよく笑う、親しみやすいおば様という言葉が似合う人であったからだろう。