部活動は兄弟それぞれ、兄は文芸部、弟は演劇部に所属している。演劇部の活動内容は自分たちが演技をするという弟の想像とは少し違ったようで、ドラマや映画、舞台などを鑑賞後、感想を言い合ったり、批評したりする他、朗読や演技、それに関するトレーニングをするというものらしい。弟は、作品の鑑賞と朗読が一番楽しいと語っていた。感想の発表や批評に関しては、感想を言うまでならできるが批評は向いていないと困ったように笑っていた。その分野について詳しいわけでもなく、改善点を見出すのは難しいとのことだった。
兄の所属する文芸部の活動内容もまた、兄の想像とは少しばかり違った。フィクションの影響か、兄はただ本を読むのが基本的な活動内容なのだろうと想像していた。それが実際は、演劇部に似た内容だった。部員全員で一本の物語を精読し、感想を言い合ったり批評したりする、読書会のようなものだった。なにかしらの部活動への入部が絶対である中で、最も人と話さずに済みそうな部活名だったので入部を決したが、活動時間のほとんどを他の部員と話している。部活動は基本的に月、水、金曜日に入っており、部活動のない日には物語を読み、ある日にはそれについて語り合うというのだ。
活動内容に関しては、部活動紹介の際に知らされた。入部を決める前に全部活動を見て回って、各部長より内容を聞かされるのだ。そのとき、部長は確かに読んだ物語の感想を言い合って批評をすると言っていたが、そんなのは時折やるくらい――それどころか部活動紹介のための台詞――で、実際のところはただ本を読んだり、なんなら部員同士が文芸とはかけ離れた話題に盛り上がっているというのが実情だろうと思った。
そう甘く考えて入部したら、この様である。部室に入って右手の壁には、文豪と呼ばれる人々の写真だか上手に描かれた絵だかがびっしり飾られており、他の壁には図書館や図書室のように膨大な数の本が収納されている。いくら語り合うのが最近の作品が多いとは言え、文学の御偉方に見張られている中では、文学に関して発声する際には毎度、口から声以外のなにかが出そうになり、毛穴という毛穴が老廃物のすべてを出さんとしているような錯覚を起こす。
兄の所属する文芸部の活動内容もまた、兄の想像とは少しばかり違った。フィクションの影響か、兄はただ本を読むのが基本的な活動内容なのだろうと想像していた。それが実際は、演劇部に似た内容だった。部員全員で一本の物語を精読し、感想を言い合ったり批評したりする、読書会のようなものだった。なにかしらの部活動への入部が絶対である中で、最も人と話さずに済みそうな部活名だったので入部を決したが、活動時間のほとんどを他の部員と話している。部活動は基本的に月、水、金曜日に入っており、部活動のない日には物語を読み、ある日にはそれについて語り合うというのだ。
活動内容に関しては、部活動紹介の際に知らされた。入部を決める前に全部活動を見て回って、各部長より内容を聞かされるのだ。そのとき、部長は確かに読んだ物語の感想を言い合って批評をすると言っていたが、そんなのは時折やるくらい――それどころか部活動紹介のための台詞――で、実際のところはただ本を読んだり、なんなら部員同士が文芸とはかけ離れた話題に盛り上がっているというのが実情だろうと思った。
そう甘く考えて入部したら、この様である。部室に入って右手の壁には、文豪と呼ばれる人々の写真だか上手に描かれた絵だかがびっしり飾られており、他の壁には図書館や図書室のように膨大な数の本が収納されている。いくら語り合うのが最近の作品が多いとは言え、文学の御偉方に見張られている中では、文学に関して発声する際には毎度、口から声以外のなにかが出そうになり、毛穴という毛穴が老廃物のすべてを出さんとしているような錯覚を起こす。