「……ねえ、朔」

 私は閉ざされた襖に手をつき、か細い声で尋ねる。

「私たちって夫婦なんだよね?」

 朔に聞こえているのかはわからない。でも、そう確認せずにいられない。考えてみれば、はっきり『好き』だと告げられたわけではないのだ。

 ともに生きようって朔は言ったけれど、あれは仲間としてという意味だったのか。これから夫婦として一緒に歩んでいくんだって思っていたのは、私の勝手な勘違い?

 そう思ってしまうくらいに、私たちの仲は進展がないどころか、出会ったとき以上に溝が広がっている気がした。

***

 翌日、境内の掃除を終えた私は神宮の東にある『神楽殿』の居間にいた。神楽殿とは、主に寝所や浴場などの生活スペースがある建物のこと。

 私はまくり上げられた御簾の向こうに見える、正午の空を眺めてため息をつく。

「はあああ~っ」

 普段なら気分が明るくなるはずの太陽の光が、やたらと目に染みた。原因はわかっている。昨日の朔の態度だ。素っ気ないを通り越して、避けられている気さえする。

 意味がわからない。私、やっぱりなにかした?