「俺の隣にいろ、なにがあっても離れるなって言ったよね!?」

 布団の上に正座していた私は、心が通じ合ったのを確かめ合ったのに、いまだ別の部屋で寝ていることへの不満をひとりぶちまける。

「物理的な距離が、ぜんっぜん縮まってないんですけど!」

 朔から『ともに生きよう、俺の番い』と言われてから二週間だ。

 すれ違っていたぶん、夫婦らしいことをしたい。そんな風に願っていたのは、私だけ? 私が花嫁にはならないと言い張っていた頃はぐいぐい迫ってきていたくせに、手に入ったらこんなにも無関心とは……。

「ダメだ、このままひとりで考えてても埒が明かない」

 私は立ち上がり、寝間着姿のまま部屋を出る。向かう先は廊下の角にある朔の部屋。

 幼い頃にした嫁になるという約束を私が忘れていたせいで、お互いの気持ちに気づくのにずいぶんと遠回りした。

 もうすれ違うのは嫌だった。朔がどう思っているのか、洗いざらい吐いてもらおう。

そう意気込んで、襖を開け放ったまではよかった。