「……私、エスパーじゃないから、なんでもかんでも察するなんて無理。だから、至らないところがあるなら直すから、教えて」

 ここまで言っても、返ってきたのは沈黙。さすがの私も耐えられなくなり、くるりと朔に背を向ける。

「トラちゃん、エビチリ肉まん買いに行かない?」

「ん? お、おお! そうだな、そうしたほうがいいな! よし、今すぐにでも買いに行くぞ!」

 一瞬、びくっとしたトラちゃんだったが、すぐさま私のところに駆け寄ってくる。そして、朔の横を通り過ぎるとき――。

「愛想尽かされても知らないからな!」

 トラちゃんが小声でそう言い、朔を睨んでいた。

 ありがとう、トラちゃん。それから白くん、黒、せっかく作ってくれたのにごめんなさい。今は、朔の顔を見ながら昼ご飯を食べられるほど、余裕がない。

 ささくれ立っている心を落ち着かせるためにも、気分転換が必要だった。



「雅、朔となにがあったんだよ?」

 大鳥居に向かっていると、隣を歩いていたトラちゃんから直球な質問が飛んでくる。

「なにがあったのか、私も知りたいっていうか……。朔が急によそよそしくなって、どうしたらいいかわからないの」

「あの煮え切らない態度は、なにか隠してるよな」

「トラちゃんもそう思う?」

「けど、雅を溺愛してるのは間違いないと思うぞ? 自分に仕える狛犬にまで嫉妬するくらいだしな。心配するだけ時間の無駄だ」

 トラちゃんは励ましてくれるが、やはり不安は拭えない。また、ため息をつきそうになりながら空を仰ぐと、心とは裏腹な空模様。