「うちのカジミールをたぶらかさないでもらえるかしら?」
ニコニコとしながら言われたので、ティムは肩が震えた。
「ひぃっ!?どっ、どうして……、いつから話を聞いていたんだ!?」
「そんなの全部聞いていたわよ。フフフフフフ。」
王妃は笑った。
「「私がペリゴール侯爵令嬢ではないと気づいていたのか!?」」
「ええ、そうよ。たたずまいが淑女のそれではなかったから、気づいたのよ。」
「そ、そんな……。上手くやれたつもりだったのに……。」
「そんな少し練習したぐらいで、習得できるものではないわ。……本物のペリゴール侯爵令嬢はどこなの?」
「さあね……ただ一つだけ言えるのは、ペリゴール侯爵令嬢はもうレオルーノへは戻ってこないと言うことだ。」
「「そんなこと、本人の意思ではないわ!!お前ががペリゴール侯爵令嬢をたぶらかしたのね!!こいつを捕らえなさい!!」」
王妃がそう叫ぶと、部屋に隠れていた従者が現れてティムを捕らえようとした。
「「もう、止めてくれ!!!!」」
カジミールが叫んだ。
従者はカジミールが普段声を荒らげたりすることがないので、驚いて手が止まった。
「どうしたの?カジミール?」
王妃は笑顔で、扇子をボキッと片手で折りながら尋ねた。
「薄々、気づいていました。バベット嬢が私に愛想をつかしたということが……。一度でもバベット嬢を裏切ってしまったら、二度と彼女の信用を取り戻せないんだ……。」
カジミールがポタポタと涙を流した。
「大丈夫よ、カジミール……。私がペリゴール侯爵令嬢を取り戻してあげるから。」
王妃は泣いているカジミールの肩へ手を置いて、優しく語りかけた。
パシンッ!!
「「痛っ!!!」」
カジミールが王妃の手を振り払った。
「「何をするのよ!!!カジミール!!!」」
王妃はカジミールを睨んだ。
「「もう良いのです!!バベット嬢は私と結婚したくないのですから、無理矢理結婚させることはできませんよ!!」」
カジミールは正論を言った。
「「そんなことはないわ!これは政略結婚なのよ!ペリゴール侯爵令嬢のご両親も王族との繋がりができて、喜んでいるわよ!それに、国民もペリゴール侯爵令嬢が結婚して、あなたを支えていくのがベストだと思っているわよ!!それなのに、あなたはペリゴール侯爵令嬢のワガママを通すというの!?」」
王妃も正論を言った。
「「ワガママではありません!!バベット嬢の意思を尊重したいのです!!これ以上、バベット嬢を裏切りたくはないのです!!」」