そんなアベラード卿、ハンプトン子爵令嬢、田中さんの期待を背負ってティム達は馬を走らせていた。
「ティム様、あそこに馬車が走っているのが見えます!!」
エズフが言った。
確かに、遠くの方で馬車が走っていた。
「行ってみるか!!」
ティム達は、その馬車へと近づいていった。
「すみませーん!!ちょっとよろしいですか??」
「何でしょうか?」
男性は馬車の運転を止めた。
「すみません、停めていただいて。ちょっとお尋ねしたいのですが、どちらまで行かれるおつもりですか?」
「えーと……、ホーマ村まで行くつもりなのですが……。」
「そうですか。馬車には誰を乗せられているのですか?」
「妻を乗せています。」
「そうですか。確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
「「何を言っているんですか!?あなた達、盗賊なんじゃないだろうな!!!?」」
「「失礼致しました。……だけど、拉致をする奴には失礼にあたらないよな!!」」
「なっ、何を言っているんですか!?」
「「ほら、これを見てみろ!!」」
ティムはその男性に紙を突き出した。
その紙には、似顔絵が描かれていた。
「「なっ、何ですか!?これは!?」」
似顔絵はこの男性によく似ていた。
「「これは、ダラムでペリゴール侯爵令嬢が食事をしていた時についていた護衛の似顔絵だ。君にそっくりじゃないか!君がペリゴール侯爵令嬢を拉致したんだな!!」」
「「ティム様、馬車の中にはペリゴール侯爵令嬢が乗っていました!!」」
エズフが、ティムと男性が話している隙に馬車の中に乗っていたペリゴール侯爵令嬢を救出していた。
この男性がペリゴール侯爵令嬢を拉致したレオルーノの騎士、ルークだった。
「「良くやった!!ありがとう、エズフ!!」」
「「くそぅ!!!」」
ルークは馬から飛び降りて、荷物の中から隠し持っていた剣を取り、ティムに襲いかかった。
ティムも懐から剣を抜いて、ルークの攻撃を受け止めた。
ティムもルークも一歩も譲らない。
そして、長い間戦いを繰り広げて、お互い疲れが見え始めている。
ティムは踏み込んで、剣を打ち込んだ。
ルークはその攻撃を剣で受け止めた。
「くっ!!」
手から痺れがビリビリきて、身体全体を駆け巡る。
「どうだ?痺れるだろう?」
ティムがハアハアと息を吐きながら言った。
「ああ……だが、あなたも疲れが見えてきているぞ。」
ルークはニヤリッと笑って言った。
「確かに私は疲れているが、私の護衛は疲れていないぞ。」
ティムがそう言い終える前に、ルークは足に痛みを感じた。
「「!?」」
エズフが背後に回り込んで、ルークの足を蹴り飛ばしたのだ。
そして、ルークはひっくり返り地面に叩きつけられた。
「「ぐぅっ!!」」
ルークは立ち上がろうとしたが、身体が言うことを聞かなかった。
ルークは無理にでも足を動かそうとしたが、足はエズフにやられて悲鳴を上げている。
「「くそっ!!!」」
ルークは歯を食いしばった。