強制的に睡眠を取らされたティムは、一日中寝た。

その時に、夢を見た。



「ティム、今日はあなたの誕生日よ!

だから、今日の料理は奮発してステーキよ!!」

「えっ!?いいの??嬉しいよ!!お母さん、ありがとう!!」

私が子供になっている。

なぜだろう?私は王子にも関わらず、庶民の暮らす小さな家にいる。

しかも、ステーキで喜んでいる。

ステーキなんて普通にいつでも食べれる、珍しくもないのに……。



ガチャ!!

「ただいま!」

「「お帰りなさい。」」

「今日は、ティムの誕生日だからプレゼントを買ってきたぞ!!」

「やったー!!ありがとう!!お父さん!!見ていい??」

「ああ!いいぞ!」

ティムがプレゼントの包装紙を破ると、昆虫図鑑が現れた。

「あーー!!これ、前から欲しいって言ったやつだ!!ありがとう!!お父さん!!大切にするよ!!」

なぜだろう??昆虫図鑑で、喜んでいる…。昆虫図鑑なんて書庫に行けばいつでも好きに読めるし、そんな珍しくもない物をプレゼントに渡すとはどういうことだ??

「ずるーい!!お兄ちゃんだけ貰って、僕も欲しーい!!」

「こらこら。今日はお兄ちゃんの誕生日なんだから、好きなものをプレゼントしたんだよ。それに、見たいときはお兄ちゃんに昆虫図鑑を貸してもらえばいいだろ?」

「はーい。わかったよ。」

なぜだかわからないが、幸せそうな家族に見えた。



ここで、目が覚めた。

「一体、なんでこんな夢を見たんだ??」



カレンにこの夢の話をしたら、ティム様はきっと王子に生まれるのではなく、平民に生まれて、家族と穏やかな暮らしがしたいという願望があるのかもしれませんねと言われた。

カレンの言葉を聞いたティムは、自分の心の中で、そう思う自分がいるのかもしれないと思った。



私は、母が好きだ。父も好きだ。弟も好きだ。

だが、無意識に三人に遠慮してしまっている節がある。

自分が三人にとって、足手まといなのではないかと考えてしまっている。

少しでも役に立ちたいと考えると、空回りしてしまい上手くいかない。

だからと言って、気を抜くと失敗する。

王子としてこんなことでは駄目だとくよくよ悩んでしまう。

私は、王子に向いていないのだろう。

だから、王子じゃなくなった……。

もし、自分が平民として生まれたら三人とも穏やかに暮らせて幸せだったのか?

分からない。

分からないことを考えてもしょうがない。

今は頭を切り替えて、自分ができる精一杯のことをこの宮廷でしようと誓った。