結局日南子ちゃんとは一度も顔を合わせないまま、リサちゃんたちの卒業制作展の当日を迎えた。あれから彼女がまた訪ねてきたかどうかはわからなかった。ほとんどの仕事を家に持ち帰り、どうしても事務所でなければできないことは遅い時間や朝早くに行くようにした。
 彼女を避けて、無理やり意識の外に追い出して、そうやって逃げれば逃げるほど、彼女のことばかり考えていた自分が滑稽だった。ちゃんと話がしたいと向き合ってくる彼女の潔さが眩しく見える。
 美術館の一角とホールを貸し切り、土日の二日間に渡って卒業生の制作した作品が展示される。ショーは日曜日の午後から、卒展の最後を飾るメインイベントとして開催される予定だ。
 ショーだけではなく、展示の様子や会場の雰囲気も撮って欲しいということで、日曜日の開場前に現場入りした。早めに着いたのに、すでに学生たちが準備に駆け回っている。例年と会場を変えて規模が大きくなったそうで、学生だけでなく教職員の熱意も凄かった。絶対成功させようという気合と、なにより楽しんでいるのがひしひしと伝わってくる。
 連絡のやり取りをしていた担当職員を呼び出してもらうと、まだ若い学生のような男性がやってきて、スタッフパスを渡された。細々とした後方支援の担当だそうだけど、すでに忙しそうだった。簡単に挨拶を交わすだけで済ませて、仕事を始める。
 一般客が入る前に、展示されている作品を次々とカメラに収めていった。洋服やアクセサリーが展示されているブース、ヘアメイクを施したウィッグが並ぶブース、ショッププランニングをポスター発表しているブースなど、かなり多岐に渡っている。自分たちの作品を撮影した写真の展示もあって、拙いなりに勢いとセンスのある写真に触発された。展示の仕方にもそれぞれ工夫が凝らしてあって、ショップのようにディスプレイしてあったり、美術品のようにライティングしてあったりと、撮影しながら随分楽しませてもらった。