――数秒間という短い時間の中で。
いつかのように、私の頭に映像が流れ込んできた。
それは、どこかの薄暗い教室で。
目の前に立つ黒い学生服を着た真鳥が、私に顔を近づけ。
ゆっくりと……額に唇を触れさせている映像だった。
(嘘……)
私と真鳥が、そんな関係のはずがない。
今まで、そんな甘い雰囲気になったことなど、一度もないのに。
なぜ、私は真鳥の唇を避けなかったのか。
まるで受け止めるかのように、じっとしていたなんて、考えられない。
あの学生服は……、以前見た沢本君の映像と同じで、中学のときのものだった。
机の上の、派手に破られた教科書には見覚えがある。
思わず蓮先輩の手を振りほどき、激しく鳴る心臓の上を両手で押さえた。
「結衣?」
心配そうに眉を寄せる先輩に、罪悪感を覚える。
私は、どうして真鳥に……。