私たちから少し離れたところでは、一心不乱にアザラシを撮影する千尋先輩がいた。
 その隣には、さらさらとスケッチをする蓮先輩の姿。
 私も思い出したように、バッグからスケッチブックを取り出す。


「へえ……。白坂さんて絵が好きなんだね」


 いつの間にか椎名さんが私の後ろに回っていて、スケッチブックを覗き込んでいた。


「うん。すごく得意なわけじゃないんだけど。描いてると落ち着くんだよね」


 私にとっては、ストレス解消に近いものがある。気持ちを落ち着けられる、大切な趣味だ。



「好きなもの、夢中になれるものがあるっていいよね」
「椎名さんは、何が好き?」
「私はバレーとか弓道かな。中学のときはバスケやってて。今は弓道部」
「弓道……。すごいね。椎名さんの部活してるところ、見てみたい」


 姿勢が良くてスラッとしてるし、格好いいだろうなと容易に想像できる。
 椎名さんみたいにスポーツが得意な人が羨ましい。
 それだけで、自分に自信が持てる。

 小さな頃から何も得意なものがなく、自己肯定感の低かった私とは大違いだ。