柏木先輩に家の前まで送ってもらったあと。
 自分の部屋にこもり、制服から部屋着のワンピースに着替え、ベッドの上で先輩からのプレゼントを開けてみる。

 ダークブラウンの箱には、一粒で数百円しそうな高級なチョコレートが5つ入っていた。義理のお返しにしては高価で、恐縮するほどだ。


 箱を飾るリボンの間にはカードが差し込まれていて、裏返してみるとそれは手描きの絵だった。

 透明な湖と青空が淡い色彩で描かれている。

 右下にR.Kと小さくサインがあったので、柏木先輩の絵だとすぐにわかった。


 サインの部分をそっとなぞり、どうして絵をプレゼントしてくれたのかと不思議に思う。
 私が先輩の絵を好きだと、いつの間に知っていたのだろうか。

 バレンタインのときに渡したメッセージカードにでも書いたのか……。曖昧で思い出せない。

 それでも素直に嬉しくて、頬が緩む。
 だってこれは、世界に一つしかない先輩の絵だから。

 私のために描いてくれたかと思うと胸の奥が温かくなる。