「あの、先輩……?」


 戸惑う声で我に返り、自分のしたことをすぐさま反省し体を離す。


「ごめん。大丈夫?」


 無言でうなずく彼女の頬がさっきよりも赤い。そんな顔をするということは、一応異性として意識してくれているのか。


「……あ。真鳥」


 やっと彼の存在に気づいたらしく、白坂さんは小さく声を上げる。
 軽くこちらを振り返った彼は微かに会釈をしただけで、そのまま何も言わず去っていった。


 クールな印象の真鳥朔哉は、白坂さんに気があるとかではなく、本当にただの知り合いなのだろうか。
 遠ざかる彼の背を見据えても、一度浮かんだ疑念はなかなか払われることはなかった。



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