「迷惑でないなら、一緒にいたいです」


 ひたむきな瞳が自分に向けられ、心が騒ぎ出す。
 立ち止まった橋の上で、彼女を独り占めしたいという気持ちが湧き起こる。


「先輩の絵が好きだから。もっとたくさん、先輩のことを知りたい」
「白坂さん……」


 あまり、無防備に言葉を発しないで欲しい。家に連れ帰りたくなる。


「あっ、違うんです、変な意味じゃなくて、」


 急に慌て出した彼女は後ずさりを始める。
 すると後方から歩いてきた男に接触しそうになったので、急いで彼女の腕を引いた。

 伯王高校の制服を着たその男は――真鳥朔哉(さくや)だった。

 白坂さんは自分の足に引っ掛かったのか、バランスを崩し、こちらに倒れ込んできた。
 柔らかな体が被さり、一瞬思考が止まる。


「わっ。ごめんなさい!」


 真っ赤になった彼女は、慌てて離れようとした。
 花のような甘い香りが降りかかり、本能のまま彼女のことを片腕で抱き寄せる。

 しかし真鳥は、ちらっとこちらへ視線を流しただけで、表情一つ変えず自分たちを追い越していった。