白坂さんは目を伏せながら、ためらいがちに口を開いた。
「三井先輩にも悪いし……二人の邪魔になることはしたくないんです。だからあまり、私は柏木先輩のそばにいない方が」
――それは困る。
以前から遠慮深いとは思っていたけど、ここまでとは。
「僕は、戻るつもりはないんだよ。三井さんに対する気持ちは……もうないから」
チーズケーキをシェアしたときも思ったけど。僕のケーキを薄く欠片ほどにしか切らなくて。つい自分のフォークで食べさせようとしてしまったが、まさか白坂さんが素直に口を開けるとは思わなかった。
こちらが強引に行きすぎて、断れなかっただけかとも取れた。だから、今度からはもう少し慎重に行かないと。
「白坂さんといると癒されるんだ。たまにでいいから、こうして会ってくれたら嬉しいんだけど。……駄目かな?」
駄目じゃない、と言うように彼女は首を横に振った。
「私も……先輩と一緒にいると癒されます」
しっかりとこちらを見て、彼女は気持ちを伝えてくれる。
たまにではなくて、本当は毎日でも会いたかった。
でも……追いかけ過ぎて、逃げられてからでは遅い。