「白坂さんと一緒なら……動物園とかどう?」


 私と一緒なら、って。何だか勘違いをしてしまいそうな言い方だ。


「いいですね。動物のスケッチ、一度してみたかったんです」
「なんだったら千尋を誘ってもいいし、ね」
「……あ。はい、そうですね」


(やっぱり、二人きりではないんだ……)


 ほんの少しがっかりしながら、私は無理に笑顔を作った。
 でもある意味、誰か他に人がいた方が緊張しなくていいかと思い直す。



「柏木先輩って。彼女さんとまだ続いているのかと思ってました」


 付き合っているのか本当に終わっているのか、その事実をはっきりさせたくて、さりげなく話題を変える。

 今ならまだ、深い傷を負わなくて済む気がする。
 憧れが恋に変わったあとだったら、心が壊れてきっと立ち直れない。


「……ずっと前に別れてるよ」


 夕陽を映した瞳に何も感情を乗せず、静かに先輩は答えた。