登校中、ぼんやりと今朝の夢について考え込む。

 あれはきっと、中学のときの夢だ。
 先輩は黒の学生服を着ていたし、私も紺色のセーラー服を着ていた気がする。

 でも私は、今まで先輩に告白された覚えなんてないし。ただ、私の願望が夢に出てきただけなのだと思う。

 だって先輩は……


「おはよう、白坂さん」


 爽やかな声がして振り向けば、澄んだ青空を背景に、柏木蓮先輩が立っていた。
 今度は紛れもなく現実の世界の先輩だ。

 ベージュのブレザーにオリーブグリーンのチェック柄のパンツがよく似合っていて、中学のときよりさらに大人っぽくなっていた。


「おはようございます、柏木先輩」


 私と目が合うと優しく微笑んでくれて、ドキリと胸の奥が音を立てる。
 彼の澄んだ瞳を見ていると、夢の中でキスをされてしまったことに罪悪感が生まれた。

(先輩。夢の中で勝手に汚してしまってごめんなさい)