ふと、スマホが振動し、メッセージが入ったことに気づいた。
 表示された名前は、密かに憧れている、柏木蓮先輩だった。

 好きな人、とは少し違う。
 彼の描く絵が、私は好き。
 また先輩の絵を見たいな、と微かな願いを頭に浮かべてメッセージを読んだら、その内容に目を疑った。


『今日、家に来れる? 見せたいものがあるんだ』


 家に、誘われている……?
 見せたいものって何だろう。
 先輩の描いた絵だといいな。

 初めてのことにドキドキしつつも、すぐにメッセージを返した。



「結衣、今日一緒に帰らない?」


 隣でスマホを取り出した未琴が、珍しく私を誘ってきた。
 けれどタイミングが悪く、顔を曇らせる。


「あ……これから、蓮先輩の家に行くことになってて」
「そっかぁ。――結衣。やっと女になるんだね。気をつけなよ?」


 数秒ほど考えて、未琴の言っている意味がわかった。


「なっ……先輩は、そんなこと考えてないから」


 思いきり否定したら、冷めた目を向けられた。