月曜日になればきっと、真鳥が私の過去について教えてくれるはず。
 でもその前に、自分で少しは記憶を取り戻しておきたかった。
 他人から聞いただけでは、実感がわかない。

 怖いけれど、思い出したい。
 一体、私は何を、いくつ忘れているんだろう。
 知らないうちに先輩に対して失礼なことをしていないか、不安でたまらなくなる。


 私は蓮先輩に、どうにかして触れてもらおうと考えを巡らせた。
 でも、まさか先輩に『手を繋いでもらえますか』なんて頼んだり、いきなり抱きついたりできるはずもなく。さりげない方法はないかと必死に画策していた。


 どうしよう。
 どうしたら、変に思われずに触ってもらえる……?


「結衣、大丈夫? 具合でも悪い?」


 想いが伝わったとは考えにくいけれど。先輩が突然、私の顔を覗き込んだ。


「……あの。何だか私、熱があるかもしれないです」
「えっ……確かに、顔が赤いね」


 そっと私の前髪をよけ、先輩は遠慮がちに額へ触れてくれる。ひんやりとした感触が心地良い。