僕の悩みを吹き飛ばすように笑った永野未琴は、特に友人の変化を気にしていない様子で。
 やっぱり自分は結衣にとって、すぐに忘れてしまうほど、重要な存在ではないのだと再確認させられた。



 不意に、肩の辺りに感じていた重みがなくなり、微かに寂しさを感じる。


「あっ……すみません、私……!」


 かなり焦った様子の結衣は、狭い席だというのに窓際へ思い切り体を寄せ、僕から距離をあけた。


「いや、大丈夫だよ。よく眠れた?」
「……はい」


 うつむいた結衣の頬がうっすら赤い。
 恥ずかしそうなその様子に、心を持っていかれそうになる。

 動物園で目を輝かせる結衣は可愛すぎて、何かしてあげたい気持ちになった。だから、ついプレゼントを贈ったけれど。
 積極的に行きすぎて、引かれていないか不安になった。
 嬉しそうに受け取ってくれたのは社交辞令だとしたら。本当は、僕のことをどう思っているのだろう……。

 自分に気持ちが向いていないなら、もっと努力するしかない。
 これ以上好きになったら自分が傷を負う、という矛盾を抱えながらも。
 昔とは違い、このまま諦めるという選択肢は今の自分にはなかった。