「おいおい」
男は呆れたように呟いて、カプセルを拾い上げる。節の目立つ大きな手のひらが彼の眼路を過った。
「そんなに死にたいのか。愚か者が」
男は彼の腕をぐっと掴み、カプセルを握り込ませた。あっさりと彼のテリトリーに侵略してきたのだ。
「誰もが望むものを持っているのに、自ら捨てるな」
男は かっと熱く尖ったものが眼球の裏側にぶつかった。思考は滾る。苛立ちとヒステリックな叫びが弾け飛んだ。
「誰がそうしてくれと望んだっ!」
「それでは死にたかったのか」
「そのほうがずっとマシだったなっ!」
彼はカプセルを男に向かって投げつけた。
真黒なスーツに漆黒のフロックコート。ひょろりと背が高いから、まるで誰かの影のようだ。
煙の向こう側に閉ざされてしまった空みたいに、青く澄んだ瞳がじっと彼を見つめている。
彼はぐっと睨みつけた。