ふしゅっと蒸気の音がする。
噴き上がる黒と白の煙が交ざり合い、いつの頃からか青い空は見えなくなった。
食堂の前に植えた花々たちもしょげている。
水をやりながら彼は全身から絞り出すような溜め息をひとつ。
「花にも動物にも人間にも青い空や綺麗な空気は必要なのに」
それを諦めてまで、求める明日ってなんだろう。
ひとは自分で掴むために二本の腕があり、二本の足があるのに。機械がそんなに必要なのだろうか。
俯きかけた赤い花をそうっと撫でて、彼はもうひとつ溜め息をつく。
ごほっ。
ごほっごほっ。
乾いた咳がはじまった。
機械と蒸気がかえって人びとの未来を奪っている。
みんな気づいているのに、なぜ見ない振りをしようとするのだろう。