面倒を見る? 一体何のことだ?

「父さん一体どういう意味?」
「意味も何もそのままの意味だ」
「は? 何で僕が彼女の世話を……」
「そうです。私もこんな変態みたいな人の世話なんて願い下げです」
「へ……」

 僕はムッときて、

「君に変態呼ばわりされる筋合いはない!」
「私の下着姿を見たじゃない。この変態!!」
「それは良……いや不幸な事故だ!」
「私の下着姿を見て不幸だなんて、よく言えたものね。喜びなさいよ!」

 いや、どっちだよ!?

「とにかく彼女がこっちに住むのは始めてだから知り合いもいないのだ。だから菊池は我々に頼ってきた訳だ」
「……」
「だから頼む。ここの土地に慣れるまで彼女の世話をしてくれないか?」
「僕は別に構わんが……」

 僕は彼女の方を見るが、ぷいっとする。
 カチンとくる。

「いや、やはり無理だな」
「そうよお父さん。この人に頼らなくても別に大丈夫よ!」
「しかし遥……」
「赤澤……君だっけ?」
「なんだよ……」
「貴方に頼らなくてもこの学校で馴染めることを証明して上げるわ」
「はぁ……どうぞ」

 これが僕達の最悪な出会いだった。
 翌日。学校に行くと、彼女はまだ来ていなかった。
 そして朝のチャイムがなっても来ない。
 ??? どうなってるんだ?
 そして鳴ってから五分後に菊池が汗まみれの状態で何事もないように涼しげにクラスに入って来た。
 後から聞いた話だが、迷子になっていたらしい。
 そして彼女の不思議な態度にクラスの生徒達はポカンとしていた。

「菊池」
「はい、先生」
「遅刻」
「……はい」

 そしてショートホームルームが終わり、女子達が彼女に群がった。

「どうしたの?」
「とても汗かいているわ」
「大丈夫?」

 色んな声が聞こえた。

「大丈夫よ」
「汗は服で拭けば大丈夫」
「ありがとう」

 え? こいつ何て言った?
 汗は服で拭けば大丈夫???
 彼女の周りの様子を見ると、何人か引いているように見えた。

 そして彼女を観察していると、少しだが分かってきた。
 対応が女子らしくない。
 なんか……変だ。
 例えば笑い方が豪快だったり、一人だけノリ方が違う。
 そしたらなんか少しずつ菊池を囲んでいた女子達が減っていった。
 彼女は不思議そうな顔をしていた。
 いや、そりゃそうだろ。そんなに変だったら。
 何人かの男子は彼女の不思議加減に戸惑っていた。
 これは……大丈夫なのか?
 僕は気にしながら彼女を見る。
 そして部活終わり、家に帰ると、親父が心配した顔をしていた。

「遥ちゃん。どうだった?」
「何か……変だった」
「やっぱり……」
「?」
「実は……」

 親父の話にすると、彼女は小さい時から女子校出身で、そのノリで学校に行かないか彼女の父親は心配していたそうだ。
 えっ、どういう意味だ?

「それってどういう……」
「つまりだ。彼女の母親も女子校出身者だったらしいが、それで菊池は女子校の生態を知ったらしいんだ」

 えとつまり、

「お前が学校で見た彼女の雰囲気が多分女子校のノリというやつだ」

 僕は驚愕した。
 あれが女子校のノリというやつなのか!??
 女子校の生徒について色々ネットで調べてみると、その通りだった。
・笑い方が芸人のそれ
・夏は露出狂になる
・ムダ毛は基本剃らない
・変顔が本当に変顔になる
・全校集会でヒザ毛を平気で抜く
 まだまだあったが、これ以上は女子校の沽券(?)に関わるので割愛する。
 もちろん良い面もあるが、何か生き方、環境が共学の女子とかなり違う感じがした。
 このままじゃ彼女は友達が出来るのか心配になってきた。
 しかし、
 ……貴方に頼らなくてもこの学校で馴染める

 まぁ、僕には関係ない。
 そして月日が経っていくと、話相手は出来たっぽいが日増しに彼女を囲む女子は減っていった。
 そしたらその日の夜、彼女のお父さんが来た。

「春美君」
「はい」
「遥のことなんだが……」
「……はい」
「学校生活はどうかな?」
「ま、まあまあではないでしょうか?」
「馴染んでいるか?」
「……話相手はいるみたいです」
「そうか……」

 少し安心した風だった。

「ノリは変じゃないか?」

 彼は僕に明るく訊いてきた。
 そこは何も言えず、目を逸らした。

「……やはりそうなのか!?」

 急に不安な顔になった。

「他の女子とは明らかに違うノリになっているのか?」

 僕はコクンと頭を下げた。そして彼はため息を着いて、

「おかしいと思ったんだ。遥に学校のことを訊くといつも不思議そうな態度になるから」
「……」
「文化というのか、明らかに共学の女子とはノリが違うのだ」

 そして軽く頭を下げて、

「頼む、春美君! 遥を共学の女子のあり方を教育してくれんか!?」
「えぇ!??」

 また変な話になってきた。