「貴方…」
長い金色の髪がとても綺麗な女性が入って来た。
その女性は嶺亜にそっくりである。
「お母さん! 」
男の子は青年から飛び降りて、女性の下へ駆けて行った。
「お母さん、お父さんね。なんか終わらせる旅をしていたって、言っているよ」
「そう、何か残してきた事があったのね」
女性は青年を見てそっと微笑んだ。
「さっ、お父さんを少し休ませてあげて。疲れてしまったら、大変よ」
「うん、お父さんまた後でね」
男の子は女性と一緒に去って行った。
青年は机に歩み寄り、引き出しを開けた。
そこには…
嶺亜と一緒に写っている和也の写真が1枚だけあった。
「…本当はダメなんだけど。これだけは、手放せなくて持って来てしまったんだ。…」
椅子に座って青年は一息ついた。
「時を経て、いつかきっとまた会えるってそう言ったよね? 前世では、父さんの愛した人だったけど。ずっと先の未来では、僕の心から愛する人とし出会えたんだよ。そして、家族だった父さんは今、僕の子供として出会えたんだ。…住んでいる星も違うし、時空の流れも違うから。前世の記憶なんて、みんな忘れてしまうけど。僕のように、時空を行き来できる力を持って生まれてくる人もたまにいるみたいだね。…忘れていたって構わないよ。魂がちゃんと覚えているから、またこうして巡り会えて。違う形でも、愛し合えるようになっているんだ」
青年はまた窓の外を見た。
「地球は今、どうなっているのかな? 」
青く広がる空を見て、青年はそっと微笑んだ。