「でも良かったな。お姉さんが、自首してくれて。自分から自首したって事は、心を入れ替えてくれたって事だろう? 」

「はい、きっとそうだと思います。…姉さんも、苦しかったと思うんです。ずっと一緒だった本当のお母さんが、早く亡くなって寂しかったんだと思います」

「そっか。その気持ちが分かったから、ずっと我慢していたんだね」

「…はい…」


 悠大はそっと、嶺亜を抱きしめた。


「もう、何も心配する事はなくなったな」

「はい…」

「じゃあ、私と…本当の夫婦になってくれるか? 」

「え? 」


 悠大はとても熱い眼差しで、嶺亜を見つめた。


「私は、嶺亜さんより15歳も年上で。もう、すっかりオジサンになってしまった。こんな私でも、受け入れてもらえるだろうか? 」

 
 受け入れてもらえる…。

 そう言われて、嶺亜は悠大が何を求めているのかが判った。


「私…オジサンなんて、思ったことないですよ。素敵な人だと、思っています。私こそ、サキさんに比べたら全然大人っぽくないし…」

「何をサキと比べる事があるんだ? 嶺亜さんは、嶺亜さんでいいじゃないか。私が選んだ人なんだ。それでいいじゃないか」

「でも…」

「前にも言ったが。適当に選んだと言っても、好きになったのは私の方だぞ」

「はい…」


 嬉しくて、嶺亜の目が潤んだ。


「嶺亜さん…」

「はい…」


「あの…キス…してもいい? 」

「え? どうして、断るんですか? 」


「あ、いや…その…。ご、ごめん…だって…13年ぶりだから、こんな事…」

「え? だって、結婚式でしたじゃないですか」

「あれは、軽くだったじゃないか。意識しなかった事だ。だから、改めて…」


 照れている悠大を見て、嶺亜はクスッと笑った。

「いいですよ。遠慮しないで、いつもでしてくれて」

 
 嶺亜がそう答えると。

 ゆっくりと、悠大の唇が近づいてきた。


「ねぇ嶺亜さん…」

 唇が触れる寸前で、悠大が声をかけた。