「本当に逝ってしまったのですね、サキさんと一樹君」

「そのようだな。死後の世界なんて、考えたことがなかったが。色々あるんだな」

「そうみたいですよ。私の母が、よく話してくれました。母は天使の血縁で純潔の天使一族だったんです。だから、心の声が聞けたり、誰かが助けを呼んでいると察知していて。近くの人が亡くなる前は、よく「もうすぐあの人、お空の上に帰ってしまう」って言ってました」

「天使か…サキも天使の血縁だと言っていたよ。だから、死んでも私の前に出て来られたって言っていた。13年も姿を現さなかったのに、今更何でだ? って思ったがな」




 話しながら、悠大と嶺亜はリビングに戻ってきた。




 一息ついて。

 嶺亜が珈琲を入れてくれた。


「この家に初めて来た時、ここにサキさんが座っていたのが見えたんです」

「え? そんな時から、見えていたのか? 」

「はい。私、不幽霊とか妖精とか見えるんです。この家のお庭には、沢山の妖精さんが居て。特に庭の花壇がお気に入りだって、言っていましたよ」

「びっくりだなぁ。そんなすごい人と、私は結婚したのか」

「すごくないですよ。ただの血縁の関係で、たまたま見えるだけですから。でも、サキさんが居てくれて。ずっと、傍で励ましてくれていたのです。「あの人の事、見捨てないでね。ちゃんと、貴女の事を見るようにさせるから」って、いつも言ってくれていたんです」


「まいったなぁ。そんな事まで、言われていたなんて」


 嶺亜は一息ついて、珈琲を一口飲んだ。


「和也君が来た時も、さっきの素敵な男性が後ろに見えたんです。だから、何なんだろう? って思っていました。和也君の守護天使かな? と思ったんですけど。違いましたね。本来の、一樹君の姿だったんですね」


「まったくもって、私には未知の世界で判らないよ。でも、実際に死んでしまったサキが見えたり、一樹が体を借りて来てくれたのは事実だな」

「ええ、そうですね」



 悠大は嶺亜の隣に座った。