嶺亜に悠大から結婚の話しが来た時も。


「コンサルティング会社社長なのね? それなら、お金持ちじゃない。いいわよ結婚して。その代わり、私が言う通りお金はちゃんと持って来てね。ショックで私、働けないから…」

 と、お金を渡す事を約束させて嶺亜に悠大と結婚するように命じた。





 フッと、芹那はため息をついた。


「私…何をやって来たんだろう…」


 溜息をついた芹那は、つきものが落ちた様な顔をしている。


「私ね、実の母の連れ子だったの。実の父親は、母と結婚する約束をしていたけど。急に金落ちの女に寝返って、母を捨てたって聞いている。ずっと1人で母は私を育ててくれていたけど、いつも仕事で家にいなくて私はずっと1人だったわ。母が再婚したのは、私が10歳の時だったの。お見合いして、弁護士さんと結婚が決まったって喜んでいた母を覚えているわ。私も、もう1人じゃなくなると思って嬉しかったの」

 フッと一息つく芹那。

「…でもね、結婚して半年後に母は不治の病にかかって亡くなったの。もしかして、捨てられるかもしれないって思ったけど。それはなかったわ。でも、1年後には再婚して新しいお母さんが来たの。優しい人で、私に気を使ってくれてたわ。別に不満はなかったけどね。2年後には嶺亜が産まれて13歳も年下の妹に、正直戸惑っていたけど。嶺亜はとっても私に懐いてくれて、お姉ちゃんってよく引っ付いて来たわね。嫌だとは思わなかったけど。いつもどこかで、私だけ血が繋がっていないって疎外感を感じていたの。嶺亜は優秀で、父と同じ弁護士になって。私は結婚も失敗していて仕事もろくにできないし…。だから、余計にイライラしていたのかもね」

 
 言い終えると、芹那はそっと和也を見た。


「有難う、なんか正直に話せてスッキリした。嘘をつき通しても、苦しいだけなんだよね」

「そうだね。うまく逃げても、終らないよ。今世で終らないと、来世にまで持って行っちゃうからさっ」

「え? そうなの? 」

「うん。俺もそうだったし。初めは、あんたに仕返ししようと思ったんだけどさっ。そんな事したら、姉ちゃんがきっと悲しむだろうし。同じ事を繰り返しているのも、悲しいからって思ったんだ」

「ふーん。そうだったんだ」


 和也はそっと、芹那の手を握った。

 ん? と、芹那は和也を見た。


「もういいだろう? あんたが今やるべきこと、分かっただろう? 」

「そうね」

「じゃあ…。今夜だけ、俺と一緒に寝る? 」

「え? 何を言っているの? 」

「いいじゃん、別にセックスする事だけが一緒に寝る事じゃないよ」


 ギュッと芹那を抱きしめて、和也はそっと笑いかけた。