「あんたさっ、俺とセックスしたら幸せになれるのか? 」

「セックスに幸せも何も、あるわけないじゃない。あるのは快楽だけ。みんなそうでしょう? 好きだの、愛だと言ってるけど。そんな言葉を言われて、その相手とセックスしても全然気持ち良くないって知っているから」

「ふーん。そうなんだ、あんたにも愛しているって言ってくれる人が居たんだね」

「いたわよ。でも、最後には私の事を裏切ったわ」

「もしかして、さっき殺しちゃった人? 」

「さぁね…。もう忘れたから」

「そっか。そんな事があったんだ。それで、あんたはお金に走ったってわけなんだ」

「お金は裏切らない。お金さえ出せば、性欲を満たしてくれる人はいるし。相手にしてくれる人だっているもの」


 ポンと、和也は芹那の肩に手を置いた。

「もしかして、あんたが本当に欲しいのって。本当の愛なんじゃないの? 」

「はぁ? 」

「それがほしくて、あんたはお金を手にして探しているだけじゃないの? 」

「ばか言わないで。愛なんて…信じていないわ」

 ちょっとだけ、芹那の横顔が寂しそうに見え、和也は芹那をギュッと抱きしめた。

「な、なんなの? 」

 突き放そうとした芹那だが、抱きしめられる和也の腕の中は何故か心地よくて…

 解らない気持ちが込みあがってきて動けなくなった。


「あんたのハート、今ちょっとだけ動いたよ」

「はぁ? 」

「自分でも判っているんじゃねぇの? きっと、初めて感じたんだと思うよ。人の腕の中が、とってもあったかいって」


 ギュッと抱きしめられ、芹那はドキッと胸が高鳴ったのを感じた。

 それと同時に何か判らない、モヤっとした気持ちが込みあがってきた。


「…あんたが殺したのは、結婚した夫と育ての両親。…だよね? 」

 そう言われると、芹那はキュンと胸が痛んだ。

「夫を殺したのは、浮気が許せなかった。別に、あんたの両親にひき逃げの事を話した事を怒っていたわけじゃないんだよね、本当は」


 違うと否定したいのに、何故か芹那は素直に頷いてしまった。


「そして、育ての両親を殺したのは。愛をくれなかったって、思い込んでしまったから…だよね? 」


 今度は素直に頷いてしまった芹那。