テレビのリモコンが宙に浮いた。


「え? な、なに? 」


 ピコッと、テレビがついた。


 するとテレビには、車に乗っている芹那と一人の男性が写っている。


「なに? これ…」


 車を走らせている男性は、芹那と話をしながら車を走らせている。

 2人とも話が盛り上がって夢中になっていると・・・

「わぁ! 」

 男性が驚いた声を上げて、急ブレーキを踏んだ。


 キーッと、急ブレーキで車は止まった。


「わぁ…ど、どうしよう…」

 男性は真っ青になり焦った顔をしている。

 芹那は辺りを見た。


「大丈夫、誰も見ていないわ。逃げるのよ! 」

「え? でも後から捕まるぞ! 」

「大丈夫よ、私が黙っててあげるから」

「だ、大丈夫なのか? 」

「いいから、早く逃げて! 」


 男性は芹那に言われるまま、そのまま走り去った。


 歩道に、倒れている母親と小さな子供がいる。

 血まみれになって、歩道には血がどんどん広がっている。



「わぁ! 怪我人だぞ! 」


 後から来た歩行者が、倒れている母親と小さな子供を発見して驚いて駆けつけた。


 救急車のサイレンが聞こえてきた…。



「なにこれ? 」


 芹那は真っ青になり驚いている。


「覚えている? もう、13年も前だよ」

「え? 」


 和也はじっと芹那を見ている。

 芹那は遠い記憶で、思い出したような顔をしている。


「その顔は思い出したようだね。忘れる事はないと思うけど、ひき逃げしたんだから」


 真っ青な顔で、芹那は和也を見た。


「なんで逃げたの? 交通事故なんだから、その場でちゃんと処理したら事件にもならないし、何も不利になる事なんてなかったんじゃねぇの? 」

「べ、別に逃げたわけじゃないわ。面倒な事に、関わりたくなかっただけよ」

「それだけなの? 」

「そう…それだけ…」


 そう答える芹那が、少し寂しげな表情を浮かべた。


 和也はそんな芹那をじっと見つめている。