1時間くらい経過すると、和也は仕事がひと段落して先に帰って行った。
ソファーに座って待っていた嶺亜は、いつの間にか眠っていた。
疲れもありホッとしたのもあるのだろう。
悠大は眠っている嶺亜にそっと毛布をかけた。
安心している嶺亜は、とても可愛い天使のような寝顔。
「可愛い…」
悠大はそっと、嶺亜の頬に触れた。
「フフッ。随分と優しくなったわね」
ふわりとサキが現れた。
「サキ…」
「やっと本当の気持ちに正直になったのね、嬉しいわ」
「有難う、お前のおかげだよ」
「別に、私はキッカケを作っただけ。後は、あんたが選んだ事。何も心配しなくていいから、あんたは思う存分楽しんで幸せになって。それが私と一樹の願いなんだから」
「ああ、解ったよ」
スーッと、サキは嶺亜に近づいた。
「まったくこの子も、とっても優しい天使ちゃんね。こんな怪我までさせられちゃって…」
サキはそっと、嶺亜の怪我している頬に触れた。
「もう、苦しまなくていいの。幸せになりなさい…ずっと、傍で見守ってるからね」
ぽわっと、綺麗な光が嶺亜の頬を包んだ。
「これでよし」
サキはそっと、嶺亜のマスクを外した。
すると…
「え? 」
悠大が驚いた顔をすると、サキはクスッと笑った。
「私からのプレゼント。不幽霊になったら、天使の力が戻ったの。怪我を治せる魔法のようなものよ」
嶺亜の怪我していた頬が、跡形もなく綺麗に治っているのを見て、悠大は驚きながらも嬉しそうに頬んだ。
「さて、私はもう少しやることがあるから。それが終わったら、やっと次のステージに行けるわ」
「サキ…すまなかった。13年も引き止めて」
「本当に長すぎね。でも、これからあんたが、幸せになるなら許すわ。私も未練なく、逝けるから」
そっと微笑んで、サキはスーっと消えた。
嶺亜はまだぐっすり眠っている。
怪我が治り綺麗になった嶺亜を見ると、悠大はちょっと頬を赤くした。