「病院に行こう、一緒に」

「い、いえ…大丈夫です…」

「だめだ! ちゃんと病院に行こう。怪我しているんだろう? 」

 え? なんで知っているの? 

 嶺亜はいて悠大を見た。


「当たっていた? ちょっとした、ヤマ勘だったんだけど」

「あ…すみません…」

「別にいいよ。一緒に着いて行くから、ちゃんと診てもらおう」

「はい…」


 素直に返事をする嶺亜の頭を、悠大はそっと撫でた。







 暫くして。

 総合病院にやって来た悠大と嶺亜。


 総合病院郷病院は家から車で15分ほどの場所にある。



「これは酷いですね。凶器何かで殴られましたか? 」


 担当の男子医師に尋ねられても、嶺亜は黙っていた。


 一緒に着き添ってきた悠大は、マスクをとった嶺亜見て胸が痛んで言葉を無くした。

 右頬がかなり晴れていて、口元も赤紫になっていた。

 これでは食事をするのもできないくらいだろう・・・。



「シップを貼っておきます。痛み止めも処方しますので、1週間ほと様子を見て下さい。途中、何か異常がありましたらすぐに受診して下さいね」

「はい…」



診察が終わり。

 支払いを済ませて、薬ももらい。


 帰る時、車に乗る前に悠大が言った。

「今からちょっと、会社に用があるから行ってもいいか? 」

「はい、じゃあ私は歩いて帰りますから」

「いや、一緒に来てくれればいい」

「え? でも…」

「待っててくれればいい、私の大切な妻を1人で帰らせるわけないだろう? 」

「いいんですか? 」

「ああ、構わないよ。社内の者に自慢してやるよ。誰にも負けない、素敵な妻をね」


 そう言って、助手席のドアを開けてくれる悠大。


 嶺亜が座るとシートベルトを着けてくれて、ドアを閉めてくれた。


 車を走らせながら。


「嶺亜さん。仕事は続けたいの? 」

 尋ねられ、嶺亜はちょっと迷った顔をした。

「私は、妻には家にいて欲しいんだ。家の中をちゃんと、守って欲しいから。どうしても仕事をしたいなら、私の会社で働いてもらえないだろうか? 」

「そんなところまで、甘えてしまっていいのですか? 」

「遠慮するなって言ったじゃないか。それに、一緒にいる時間を増やしてゆきたいんだ。沢山、嶺亜さんと、楽しい思い出を作りたいと願っているから」


 とても嬉しい言葉に、嶺亜は胸がいっぱいになった。


「有難うございます。今の仕事が終わりましたら、少し考えてもいいですか? 」

「ゆっくり考えればいい。今は、ちゃんと怪我を治して元気になる事が先だからな」

「はい・・・」