翌朝になり。
嶺亜は何時ものように朝食を作ってくれていた。
「すみません、今日は早く出かけなくてはならないので先に出ます。食べ終わったら、そのままシンクに置いておいて下さい。帰ってから、片づけますので」
そう言って、嶺亜は逃げるように先に出かけてしまった。
「追いかけてやれば? 」
和也がちょっと冷めた口調で言った。
「だが・・・」
「何迷ってんの? 仕事より、大切な事があるだろう? 」
「・・・分かった。・・・」
「仕事の事は気にするなよ、俺が何とかしておくから。急ぎはないからさっ」
「ああ、ありがとう」
悠大は嶺亜を追いかけた。
急ぎ足で嶺亜は家を出て来た。
途中コンビニに寄った嶺亜。
そして向かった先は・・・
住宅地にある公園。
朝の公園は誰もいない。
派手な格好をした嶺亜の姉の芹那が待っていた。
黒いつばの広い帽子をかぶって、派手な赤いワンピースに赤いハイヒール。
指には高価な指輪をはめている。
嶺亜がやってくると、芹那はニヤッと笑った。
「遅かったわね、10分待ったわ」
「ごめんなさい、朝の準備をしていたので・・・」
「まっ、あんたも一応主婦だものね。それで、ちゃんと持ってきたんでしょうね? お金」
手を差し出して、まるで服従しろと言わないばかりの目をしている芹那。
嶺亜は鞄から封筒を取り出した。
「もう、これだけしかありません。昨日のお金は、今月の生活費ですから」
封筒を受け取り、芹那は中を確認した。
「少ないわね、これじゃあ遊べないじゃない。弁護士って、こんなに給料少ないの? 」
嶺亜は黙っている。
「足りないわ。旦那に言って、もらってきてよ。何かと理由を言えば、お金くらい出してくれるでしょう? あんたの旦那、金持ちだし。100万くらい出させたら? あんたの体使えば、簡単でしょう? 」
「そ、そんな・・・」
「なぁに? あんた私に逆らえるの? あんたのせいで、私の人生がめちゃめちゃになったの知っているでしょう? 」
嶺亜は黙って俯いてしまった。